第1章

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 もうすぐ桜が咲きそうだ。こくり、と頷いて目を開けた。  時計は午前七時。いつの間に二時間も眠っていたのか。冬であることを忘れそうなほどの暖かさにまた視界が暗くなってきて、目が閉じる。  こくり、と頷いてハッとした。いけない、学校へ行かなければ。こたつから這い出して、冷蔵庫からピンクの包装紙でラッピングされたチョコレートを取り出し、鞄へ突っ込んだ。  扉を開ける。街は、白銀の世界。火照った肌を突き刺す朝の空気。いつもの桜並木の向こう、あの人の手にはあの子の手。  裸の枝から、パサリと雪が落ちた。春は、まだ遠い。
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