2章

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「姫川さん!」 そうと決まれば即実行。名前を呼ばれて振り返る姫川さんはまるで天使のようだな~。今日の俺は姫川メイドさんの夢を見たので絶好調。(当社比)きっとうまくいく。 「笹原くん。どうしたの?」 久しぶりに二人で話す。緊張する。 自分の名前が姫川さんの小さな口から紡がれるだけでこの上なく胸が高鳴る。 「姫川さん文化祭誰かと回るの?」 「うん。美咲と優子と回るよ。」 「じゃあさ、その二人がシフトの時、よかったら一緒に回らない?」 できるだけ平静を保ちながら言葉を紡いでいった。姫川さんと二人がシフト違うことはリサーチ済みである(キモい)。でも姫川さん人気だしきっと空いてる時間もまた別の人と一緒にいるんだろう…… 「うん!大丈夫だよ。」 あ~やっぱダメだったか~。仕方ないよな姫川さん人気だし……あれ? 「まじで…!う、嬉しい。」 どもっちゃったよ!しかもすげえ素直に感想述べてるじゃん!さっきからキモすぎだろ俺! 「あはは。わたしも。」 ぱっと花が咲いたように笑う姫川さんに、俺は一瞬で目を奪われた。 姫川さんの笑顔は、どうしてこんなに鮮やかでカラフルなんだろう。 笑った時に口元に手を添えて、体を前に屈め、炭酸みたいに弾けて笑う。 俺はそんな彼女の笑顔が、とても好きだ。 「じゃあまたね。笹原くんと二人で回るのなんか緊張しちゃうけど、楽しみにしてるね。」 「ん。」 思わず素っ気ない返事をしてしまう俺。考えていることと行動が一致しないのをどうにかしたいものだ。 自分の重大なミスに気がついたのは、姫川さんの背中が視界から消えた頃だった。 「俺と…二人?」 なんということだろうか。姫川さんと久し振りに二人っきりで話せたことに舞い上がり、完全に蒼のことを忘れていたのだった。 まあ、後で蒼も一緒だけど良いかって…聞けばいいよな。 そう思いながらも俺の頭の中ではずっと、姫川さんの炭酸みたいな笑顔が弾けていた。
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