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「おいお前着替えろよ~~」
「これ着たまんま回って宣伝してこいって言われたんだよ」
シフトが終わり姫川さんと回る時間まで暇なので蒼と回っている。
俺はシフトを分割せずに一気にとったからもう本日の仕事は終了だ。
午後と午前でシフトを割った美咲たちには感謝しかないな。そのおかげでシフトを一気にとった姫川さんと二人の時間に空きができて俺が姫川さんと回れることが出来たんだ!ありがとう!
しかし蒼の人気度はとんでもないな。女の子たちにいっぱい囲まれていて前進することもままならない。
そろそろ買った焼きそばが冷めてしまう…。そう思った俺は蒼を連れて関係者以外は入れないようにした空き教室に入った。
「ここなら落ち着いて焼きそばが食べられるだろ。」
「そうだな。あー静か。」
「でもせっかくの文化祭なのにちょっと勿体無いな。」
「まあこれはこれで良い。」
たわいもない話をしながら買った焼きそばを口に含む。
「そういえばさ、直」
焼きそばを含んだ口で ん?とだけ返す。
鉄板で焼いたパサパサの焼きそば結構好きなんだよな。お祭りって感じがして。
「姫川さんに告白とかするつもりある?」
この申し訳程度に入ったキャベツも……
「…へ。」
咀嚼が止まる。
ゆっくり蒼の方に目線を寄越すと、本人は相変わらず焼きそばを食べて続けている。
「……。」
ヤバい、何か言わなきゃ…。
「俺知ってたんだ、お前の気持ち。分かってて姫川さんが気になるって言ったんだ。ごめんな。」
俺が口を開くより先に蒼はポツリと話した。別に謝るような事じゃない。複雑な気持ちだけど、蒼は悪くない。
「俺の方こそ、ごめん。お前に黙ってて。今日姫川さんと一緒に回ることになったのも、最初は本当にうっかりしてただけだったけど、姫川さんと一緒に回りたくてあえて訂正しなかったんだ。ごめん。」
俺は正直に言った。
蒼の信頼を失いたくなかったのだ。
「告白は…近いうちにするつもり。」
そう言って蒼の方をもう1度見ると、
とても辛そうに笑っていた。
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