3章

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入学式から1ヶ月経ったある日、席替えで俺の隣に座った女の子は、その日とても眠そうだった。 怖い先生の授業中も、一生懸命聞こうとしているがすぐにコクリコクリと頷くように居眠りをしている。 席順に先生が教科書を読む人をあてていて、あと1人でその子になってしまう。 俺は我慢できなくなって、美しいその子に話しかけた。 「姫川さん、次だよ。」 うつらうつらと眠っていた女の子…姫川さんはパチンと目を見開き覚醒する。 「あ…」 眠っていたからなのか、はたまた俺が話しかけたからなのか、彼女は驚いた表情の後に赤面した。 「9ページの10行目。」 「ぁ…ぁりがと。」 照れくさそうに彼女ははにかんだ。 授業が終わった後、話しかけてきたのは彼女の方からだった。 「さっきはありがとう。居眠りしてるとこ見られちゃった…恥ずかしい。」 こんなに可愛い子に話しかけられるとそれだけで胸が高鳴ってしまう。そんな暴れる心を抑えて俺は会話を続ける。 「ううん全然いいけど、姫川さんが居眠りなんて珍しいね?なんかあったの?」 「昨日従兄弟たちが遊びに来たんだけど、なかなか寝てくれなくて…夜通しトランプゲーム。」 「夜通しトランプ!?あはは!勉強で夜更かししてるのかと思ったらトランプか~」 「なんで笑うの~!?私そんな勉強好きに見える…?」 「うん、いやだって入学式生徒代表で話してたじゃん。相当勉強しないとトップなんてとれないし、勉強好きなのかなって。」 「別に嫌いではないけど……私だって勉強以外のことが好きだもん!」 「いやそういう意味で言ったわけじゃ!ごめんごめん。」 きっかけは些細なことだったけど、それから俺たちは自然に仲良くなっていく。というか最初からなんとなくウマもあったのか、抵抗を感じなかった。 姫川さんは、従兄弟が来ると、夜通しトランプゲームに付き合わされる。 先程手に入れた情報を、頭の中で何度も復唱していた。
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