3章

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「お店もう閉まってきちゃってるね。」 「でもまだやってるとこある、あ、タピオカ屋さんまだやってる!しかも50円引きされてるやった!」 「あ!本当だ!すごいラッキーだね~」 嬉しそうにタピオカを受け取り姫川さんが口をつけると、半透明な管から黒い球体がせり上がってくる。 「美味しい!ミルクティー味美味しいよってここのクラスの子にオススメされてたから、飲めてよかった。」 くるくると表情が変わる。同じ嬉しいという感情に一体いくつの表情バリエーションを持っているんだ姫川さんは。 気づくと俺も一緒になって微笑んでる。 前から思ってたんだけど姫川さんの笑顔ってすごい引力があるよな。一瞬で人を惹き付けて離さない。そこにぱっと花が咲いたように笑うから、つい振り向いてしまう。 まるで蜜を求める蝶々のようだ。 …自分に美しい表現をつけてみたけど蝶々はさすがに似合わなすぎてネタの域だ。 「笹原くんは何味飲んでるの?」 「俺はカルピス味」 そう答えるとへぇ~っと気のない返事をする姫川さん。これはもしかすると… 「ひとくち飲む?」 「え!」 図星!という顔になるわかりやすい彼女。 「俺口付けちゃったけどよかったらどうぞ。」 「ありがと。」
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