3章

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後夜祭が始まる。 残念ながら姫川さんは後夜祭も女子と約束しているみたいで始まる前に別れた。 でも俺は姫川さんを探して、告白する。 その事実だけは変わらない。 辺りをキョロキョロと見渡す。周りではカップルやら友達らがキャンプファイヤーの火を見ている。 メラメラと燃えるその火の向こうに彼女はいた。 「ひ…姫川さ」 1歩踏み出す。姫川さんのもとにー ーその時、肩を掴まれた。 「蒼…」 無言で俺の肩を掴む手は、力なく震えている。 「蒼。俺、今告白することにしたんだ。どんな結果になっても、友達でいてほしい。」 蒼は何も言わない。ドクン、と跳ねる心臓。どうして何も言ってくれないのだろう。 「………分かった。引き止めて、ごめん。」 暫くして絞り出すような声で答えた。王子様にしてはあまりにも気弱で、小さな声に、俺は動揺した。 どうして蒼はここ最近、どこか自信なさげだったのだろうか。 高校に入学する前は、なんというか王子たる自信と落ち着きがあったような気がする。 しかし今はどうだろう? 姫川さんにアプローチこそするが、どこか弱い部分がある。 俺に遠慮、してるのか? それだけ、なのか? 考えても分からないループの中にすっぽり入ってしまった俺は、ぐるぐると回りながら目の前にいる親友を見つめる。 肩から手が離れる。それがすごくスローに感じられた。何か大事なものを肩に乗せていたように。 俺に背を向けて、蒼は誰もいない校舎に入っていった。 振り向きざまに見せたあの辛い表情が頭にこびりついて離れない。 ぱちぱちと火の焚ける音が鳴る。 すぐ向こう側には姫川さん。 俺は、向かった。
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