3章

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「おい。」 薄暗い教室の机に乗り、窓の外を眺めている男に呼びかける。 男は振り返る。 「告白はもうしたの?」 寂しそうな笑顔でそう呟く。 「してない。お前がなんか、めっちゃ辛そうだったから…。なあ、言いたいことあるなら言ってくれよ?俺、蒼と付き合い長いし、これからも仲良くしたい。頼むから蒼の本心聞かせてくれよ。」 モヤモヤ。ずっとそう感じてきた。蒼という人物の輪郭が定まらなくなってきた気がするのは最近の話ではない。 蒼の気持ちが霞みがかったように見えないのだ。幼馴染なのに、全く見えてこない。 それは蒼が自ら隠そうとしているから見えてこないんだと思った。蒼は取り繕うのが上手だ。人一倍優しくて気を遣うから、相手が困る事は極力やらず、自分が困る事になっても自分が損する道を選び、笑うのだ。 だから正直俺が姫川さんのことを好きということを知っていた、と言われた時は驚いた。蒼が初めて自分の欲を、諦めなかったのだ。いつもの蒼だったらきっと、俺が姫川さんのことを好きだと認識した時点で諦めて背中を押してしまうくらいのことしていたと思う。 しかし蒼は先手を打ったのだ、俺に姫川さんのことが気になっている、と伝えた。その事実は蒼がどれだけ姫川さんを好きか物語っている。 そう思ってたんだけど、イマイチ蒼の本気が見えてこない。これだけ好きなら、もっと姫川さんにアプローチしているはずだ。 やはり俺が姫川さんを好きだという負い目が、こいつに歯止めをかけているのか? 人一倍優しいやつだから、きっとそうなんだろうか。 蒼はまだ沈黙している。 「あのさ、蒼は昔から優しくて、欲しいものも相手が欲しがってたら遠慮するだろ。でも今までと違って姫川さんのことは本当に欲しいんだろ?じゃあ俺に遠慮することないじゃん。俺だって遠慮しない、蒼は俺の親ゆー…」 「違う!!!!!」 蒼の声が人のいない教室に響く。 俺はビクリ、と肩を揺らした。
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