3章

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「そ、蒼…?」 ドクン、ドクン。 心臓が鳴る。蒼が怒ったのだ。 声を荒らげたところは初めて見た。本気で怒っている。こんなに感情的になるなんて、俺は一体何をしてしまったのだろうか。 「違う……違う…けど…ごめん……大声だした。何でもない。」 蒼の声は震えている。 何でもないわけないだろ…。一体蒼はどうしたというんだろう。あまりにも不安定で、怖い、蒼という人が溶けてなくなってしまいそうだ。 「何が違うんだよ。俺何言われても大丈夫だから、言ってくれ。」 「……それは………。…。」 モヤモヤ。霧がかる。 何かがズレている。なにか根本的なところから。 どこから?最初から?何が? 「直。」 「なに?」 「俺が今から言うことを直が聞いたら、俺たちは絶交する。」 蒼がゆっくりと俺に視線を送る。蒼から強い意志を感じた。 目を見開き固まる俺を他所に、ふっと笑う。 「それでも聞く?」 「俺は…………。」 選択を迫られ、どちらが本当に正しい選択になるのか、俺は分からなかった。ただ、俺にとって、蒼にとって、絶対に聞いてはいけないものだということは分かった。 でも それでも俺は 「聞きたい。俺は蒼の気持ちが知りたい。」
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