4章

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冬がやってきた。 手袋を家に置いてきた俺は白い息を吐いて冷え切った手を暖める。口に近づけることで顔も一緒に暖かくなれるんだぜ! …でもやっぱり 「超寒い」 「わかる…顔とか防御できないからもう凍りそう。めざし帽欲しい。」 めざし帽を被り通報される未来もそう遠くない友人はチェックのマフラーの中に顔を埋める。ちなみに俺はグレーのレッグウォーマー。 スマホを弄りながら駅のホームで電車の時間を確認する。俺たちの乗る電車はあと4分後か。 「あ、」 隣にいる友人が声を漏らす。 「なに?」 「姫川さんだ。」 「えっ」 友人の視線を追うとそこには天使がいた。 階段から降りてくる様子がスローモーションで再生される。 サラサラの髪を赤チェックのマフラーの中に入れ、アーガイル柄の手袋をつけている。キャメルのコートの下からスカートが少し覗いている。可愛い。冬バージョン姫川さん可愛い。 全く進展してないけど、姫川さんは相変わらず、俺の天使だ。 あれから俺は、結局告白をしなかった。 頑張れよ、とは言われたけれど、蒼とあんな風に決別した後姫川さんに告白する気にはなれなかった。 蒼は蒼でちゃっかり恋人作って楽しくやってるけど、まあそれは本人の自由だ。俺も自分の意思でこの状態を選択した。 なんだかんだ俺は蒼と半年口をきいていない。 何度も話しかけようと思ったけど、蒼が拒絶していることが伝わってきて、勇気が出なかったのだ。 あの時のように無視されたら、もう立ち直れる自信がなかった。 でも、蒼ともう一度話して、以前のような仲に戻りたいと思っている。 そして、 俺は、姫川さんに……
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