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「直くん今日は夕飯うちで食べてくるから~うんうん、それじゃあよろしくね~」
俺の母親に連絡しているであろう蒼母の声はとても陽気だ。
俺はというととても気まずい。
「あら、どうしたのそんなとこに突っ立って~まだ夕飯できてないから蒼の部屋で一緒に待っててね!」
「は、はい」
やはり言われてしまった…。
蒼と向き合うことを望んでいるとはいえ、やはり怖いのだ。重い足取りで階段を一段一段登っていく。部屋のドアを開いてからなんて話しかけようか考える。
おじゃまします?久し振り?ごめん?おばさん相変わらずだな?
浮かんではパチパチと弾けて消えていく。
心はバクバクと音を立てている。
部屋の前までやってくる。無機質なドアが不安を膨張させる。深呼吸をして落ち着かせる。大丈夫。何を怖がっているんだ。あいつはすげえ優しい奴なんだ。それは俺が1番分かっているはずだろ?
意を決してノックを3回。
「蒼、入るよ。」
入っても良い?と聞かなかったのは、返事が必要だから。俺が臆病だからだ。
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