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私は、何時の間にかリビングのテーブルに俯せて寝てしまっていた。この部屋に、時計なんて物は無いので今が何時かは定かではないのだけど、大分時間が経っていたのだと分かる。それは、窓の外の景色からも窺える。向かい側の家は、しんと静まり返り暖かな明かりは消えてしまっていた。嗚呼、もう良い子は眠る時間なのね。アナタは、また今日も帰って来なかった。
アナタを信じて、待ち続けて待ち続けて……何度目の雪夜か。
私は、準備していた夕飯をシンクに投げ捨てた。アナタの為に、用意したのよ。アナタが帰って来なければ、私の用意した夕飯はゴミにしか成らないじゃない。勿体ないことね。
……アナタは、何時になったら帰ってくるの。
悪い子ね。私を待たせるから、イケないの。そう、そう……アナタがイケないの。私は何時も、アナタが暖まるように家を温めて……身体も暖まるように暖かい夕飯を用意して、湯冷めしないようなお風呂も用意した。
なのに……私の想いを踏みにじるように、アナタは何時も帰って来ない。そう……アナタは何も知らない。テーブルの上の花瓶に活けた紫色の花も。
私が、アナタを信じて待っていることも、知らないの。
アナタを知っている。私は、アナタを知っている。何時帰って来ても良いように、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日!! 私は……私はっ!! そう、アナタの為に、アナタの為だけに、私は……!
私は、アナタが好き。アナタだけ世界に居れば良い。早く、早く……アナタ……アナタを……私と甘い甘い城に……閉じ込めなくちゃ。
二度と、出られないようにね。そうしたら、帰って来るのを長く永く待たなくて済むから。
私が悪いんじゃない。
私は、ただ、アナタを――。
………………………………………。
――そうだね。
・・
――早く、キミをお帰りなさいと出迎えてあげなくちゃ。
――早く、キミを救ってあげなくちゃ。
・
――僕は、何時もキミの騎士(ナイト)でなくちゃ、イケないから……。
――待てども待てども、帰ってきてくれない……から。
だから、捜しに行かなくちゃ。
静まり返った冷え込む冬の夜、幽かに聞こえる軋みの音。
月も隠れた雪夜、花瓶に活けられた紫色の花が淡く明滅した。
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