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“アナタ”を待ち続けた“私”。
“キミ”の騎士(ナイト)である“僕”。
“私”は華。小さな想いだけを養分に活けられた花。
花瓶に活けられた季節外れの紫色の花と同じだ。
“アナタ”を養分に育ち続ける。“アナタ”が帰って来なければ枯れてしまう花。
“キミ”は“アナタ”で“僕”が“私”で。毎日の雪夜に一人、窓の外の家庭を嫉み僻むんだ、変わらない日常を過ごして待ち人は必ず帰って来るそんな暖かな家庭に憧れて居た。
アナタに逢った日から。
キミを見つけた日から。
僕は、いつだってキミの影に居るのに、キミは気づかない。キミの好みも嫌いもなんだって知っているんだよ。
私は、アナタに愛でられる花に変わりはないけれど、アナタは自分が愛されていると知らないの。私は、アナタをずっと視ている。
なのに。
キミは、アナタは、どうして還って来ない?
キミの居場所は此処にしかなくて。
アナタを愛する者は此処に居るのに。
アナタは、いつもそう。私を待たせるの。
キミは、いつもそうだ。僕を心配させる。
雪は降り積もる。まるでアナタを拒絶するように。
雪は降り積もる。まるでキミを見失わせるように。
アナタが居なければ、私に存在する意味も価値も無いのに。
キミが居なければ、僕は生きる光もないんだ。
キミは、還ってくる。
アナタは、戻ってくる。
もうじき、この居場所へ。
そう信じてる。
結露した窓の雫が一筋、滴のように流れていく。曇った窓に一筋描かれた線は蚯蚓が這ったように歪んでいる。その窓の向こうの家々も歪んでいく。それは、涙に滲む視界のようで。
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