1人が本棚に入れています
本棚に追加
―子ども―
ある雪の日。
患者の男が、隣町の中を歩いていた。
いつもならただ寒いだけの町が、その日はクリスマスの絵画のように、宝石を散らして輝いていた。
患者の男が立ち止まった。
そこは、オモチャ屋だった。
硝子の向こう側には、オモチャが見える。
「いいな」と、患者の男と、誰かが呟く。
ふと、横を見ると、子どもがいた。
その子は、男の子。
硝子ケースに顔をくっつけて、オモチャを眺めている。
子どもには、オモチャを買う贅沢な金はない。
ならば盗めと悪魔は囁くが、子どもを泥棒にして、無理やり大人にしてやるのは、あまりにも可哀想。
代わりに盗んでくれる人がいれば、話は別だが、まだココにはいない。
患者の男は、オモチャにさよならと手を振り、オモチャ屋から離れた。
最初のコメントを投稿しよう!