右か左か

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「なるほど、それは災難でしたね」  私の話を終わりまでじっと黙って聞いていた佐々木さんは、静かに言った。 「少し左に傾きますよ。気をつけて」 そう言うと佐々木さんはスノーモービルのハンドルを左に切る。ぐいっと車体が傾き、人気の少ない方へと向かう。  右へ左へ。私はそんな二択に振り回されてばかりだ。 「私も同じようなことを思う時があります。あの時あちらを選んでおけばよかった、なんて日常茶飯事です。取るに足らない事も、そうでないことも、後悔の連続です」 振り返らないままそう語る佐々木さんの声は、どこか諭すような優しさを含んでいた。 「そういう時、どうしているんですか?」   不意に口をついた言葉。どうすることもできないと分かっているのに、私の中の意地悪が頭を擡げた。
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