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右か左か
ゲレンデを走るパトロールのスノーモービル。その後ろに乗せられている人は大概が怪我をしている。手や足に応急の添え木を付けて。
あれに乗ることになる人は、よほど運動神経がなくて転んだ初心者の人か、あるいは相当に運のなかった人。そのどちらかだと思っていた。
今の私は、果たしてどちらなのだろう。
唸るような音を立てながら、スノーモービルがナイターゲレンデを走る。ライトの灯りが道を作るようにしながらゆっくりとコースを駆け下りる。
あの時。それとあの時もだ。右ではなく左を。そして左ではなく右を選んでいたら、きっと変わっていたに違いない。そう考えると、やはり私は”相当に運のない人”の方だったのか。
そう思いながら天を仰いだ。吐いた息は白く漂うこともなく、すぐ後ろに消えていく。
星が綺麗だ。
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