ある日のこと

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 女主人が鉄板で焼いてくれたお好み焼きを三人で食べながら、他愛もない内容で談笑していると、シュンイチが店に掛けてあるカレンダーに目が止まったみたいで、 「明日バレンタインデーか」  俺にとっての悪しきイベントワードを、親友はぽろりと口にする。 「そうだね。でも明日って土曜だから、学校休みだよ」 「お、それはラッキー」 「確かにラッキーだね」  モテモテブラザーズ(勝手に命名してる)は、チョコがもらえなくてガッカリするのかと思いきや、なんだか安堵している。  理由と聞くと、 「貰う量が多いから、姉貴に貰えない人の気持ちを考えた事あるのかって毎年怒られるんだよ」  シュンイチのお姉さん、それは貰えない男たちへのフォローなのか、蔑みなのかよくわかりません。 「アラタくんに渡してくださいっていうファンの子たちに会わずに済んで良かったよ。事務所を通すより、弟を通したほうが確実だからね」  有名人の家族を持つといろいろ気苦労があるんだな。  アラタというのはケイの兄貴の名前だ。 「あんた達、明日水曜だよ」  女主人が会話に入り込んで、俺たちの視線は一気にそちらに向いた。
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