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「え、だって、カレンダーには……」
俺がカレンダーを指さすと、確かにカレンダーの2月14日は、土曜の列に位置していた。
「あんた、このカレンダーは去年のだよ。それも一月のよ」
女主人に大きく鼻で笑われた。なんかショックだ。
小学生の時から通いつめている年月のおかげで、高校生に成長しても女主人の俺への扱いは小学生のままだ。
「おばちゃんがいつまでも去年のカレンダーを掛けているから悪いんだよ」
勘違いした自分も悪いが、鼻で笑われてなんか悔しくて、つい向きになってしまった。
「だってこのカレンダーの1月の写真がお気に入りだから、なかなかめくれないのよ」
いい年なのに女主人は少女のように恥じらう顔をして、カレンダーの写真の中にいる人物をみた。
まるで恋人のように、朝起きたらベッドのシーツの上で、君の寝顔可愛いねなんて言って微笑む美青年が、窓から差し込む朝日(多分撮影用の照明だろう)の優しさに照らされている。
中村ユウヤ。
ケイの兄のアラタと同じ芸能人で、アラタと同じ女性人気が高い若手俳優だ。
「明日学校か。また姉貴に怒られる」
「はあ、また兄貴へのチョコがあるのか」
モテモテブラザーズは嘆息して、残りのお好み焼きをつまんで口に入れている。
彼らにとってはいつもの2月14日。
俺はあの時から忌み嫌う日が来ると思うと辛くなる。
そして毎年恒例の母と姉からの情けのチョコを貰うだろう。
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