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席に着くと彼女は接客に戻ってしまった。
忙しいよな…そりゃ。
そう思った時だった。
さっきまで店内の奥に消えた彼女が、席に戻ってきたのだ。
何かを持って。
「お待たせしました。特別サービスです。」
ニッコリと微笑むと同時にココアが置かれた。
苦いコーヒーが飲めない俺のこと、覚えててくれたの…?
「冷えて寒かったでしょー?ココアで温めてね。」
「ありがと…でも大丈夫。お前が居るだけで、心は温かいからな。」
「もう…ふふ、」
口に一口運ぶと甘かった。
まるで俺たちみたいに。
窓の外で、ふわりと舞い上がる粉雪。
外はこんなにも冷たく冷えきった風が吹雪いているのに、心と身体が温かいのは、きっと彼女が目の前で微笑むからなのかな。
どうか来年もこうして、二人で笑い合いながら雪の夜を過ごせますよう。
降り続ける雪に、そっと願った____。
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