冷えきった身体も君と居るだけで温かい。

5/5
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
席に着くと彼女は接客に戻ってしまった。 忙しいよな…そりゃ。 そう思った時だった。 さっきまで店内の奥に消えた彼女が、席に戻ってきたのだ。 何かを持って。 「お待たせしました。特別サービスです。」 ニッコリと微笑むと同時にココアが置かれた。 苦いコーヒーが飲めない俺のこと、覚えててくれたの…? 「冷えて寒かったでしょー?ココアで温めてね。」 「ありがと…でも大丈夫。お前が居るだけで、心は温かいからな。」 「もう…ふふ、」 口に一口運ぶと甘かった。 まるで俺たちみたいに。 窓の外で、ふわりと舞い上がる粉雪。 外はこんなにも冷たく冷えきった風が吹雪いているのに、心と身体が温かいのは、きっと彼女が目の前で微笑むからなのかな。 どうか来年もこうして、二人で笑い合いながら雪の夜を過ごせますよう。 降り続ける雪に、そっと願った____。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!