白と黒

1/1
前へ
/1ページ
次へ

白と黒

匂いがした。 鼻に爽やかな、青い匂いがツーンと入ってくる。冷たさを纏わせているが、柔らかい。その心地よさに自然と大きく深呼吸をする。 すっかり外は闇に染まっており、辺りは静まり返っている。既に真っ暗にしたこの部屋も、音はどこかへ吸い込まれている。 静かで心地いい。すごくあったかい。 そう思ったのも束の間。 窓が小刻みに動き出した。 風だ。透明な何かが訴えかけている。 その大きな音に苛立ち、掛け布団を引き寄せて耳を塞ぐ。 だがそれでも、鳴り止まない。 気づけ、とでも言うように窓が叩かれている。 それでも、断固として動かずにいるが、透明なそれは窓を叩く事を止めない。 それどころか、一層、力が増し、窓が割れるのではないかと思うほどベッドが揺れた。 流石に我慢ができず、勢いよく起き上がり、締め切ったカーテンを開けると。 黒い海の下に白い海が広がっていた。 宝石のような輝くこの世界に。胸を打たれ、釘付けになった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加