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白と黒
匂いがした。
鼻に爽やかな、青い匂いがツーンと入ってくる。冷たさを纏わせているが、柔らかい。その心地よさに自然と大きく深呼吸をする。
すっかり外は闇に染まっており、辺りは静まり返っている。既に真っ暗にしたこの部屋も、音はどこかへ吸い込まれている。
静かで心地いい。すごくあったかい。
そう思ったのも束の間。
窓が小刻みに動き出した。
風だ。透明な何かが訴えかけている。
その大きな音に苛立ち、掛け布団を引き寄せて耳を塞ぐ。
だがそれでも、鳴り止まない。
気づけ、とでも言うように窓が叩かれている。
それでも、断固として動かずにいるが、透明なそれは窓を叩く事を止めない。
それどころか、一層、力が増し、窓が割れるのではないかと思うほどベッドが揺れた。
流石に我慢ができず、勢いよく起き上がり、締め切ったカーテンを開けると。
黒い海の下に白い海が広がっていた。
宝石のような輝くこの世界に。胸を打たれ、釘付けになった。
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