最果ての夜

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 昼過ぎには戻ると言っていたから何かしておけることはないかとキッチンを覗くと、キッチン横から二階へ上がれる階段を見付けた。 「上にも部屋があったのか……」  人一人がぎりぎり通れるくらいの狭い階段の先にある部屋の扉を開くと、そこは小さな格子窓と三脚に乗せられた真白なキャンパス、キャスター付きのサイドテーブルがあるだけの屋根裏部屋で、吐く息が白くなる程空気が冷たい。  余りの寒さに戻ろうとした時、サイドテーブルの上にピカピカと点滅する光に気付いた。 「……何だ?」  傍へ寄って見付けたのは携帯だった。  圏外だから使えないと言っても、こんな所に置く必要があるのかと雪は訝しげにその携帯を手に取る。  画面を開くと電波表示はちゃんと表示されていて、ここが圏外では無い事を示していた。 「……何故だ? 携帯が繋がるなら、早く連絡すれば……」  何処に? 誰に? 警察? 記憶もないのに? 殺人犯かもしれないのに?  今の雪にとって頼れるのは音生だけで、音生がどうしてどうしてこの携帯をこんな所に置いていたのかすら謎だ。  雪は記憶のない自分が殺人犯なら、今頃指名手配されているのではないかと思い当たり、恐る恐るその携帯でニュース検索してみる。  画面を開いてトップニュースに出て来たのは、衝撃的なものだった。
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