最果ての夜

　そこには『シンガーソングライターNEOが行方不明』と書かれており、雪はいまいち良く飲み込めないまま動画を再生する。

「今、人気を集めているシンガーソングライターのNEOさん、21歳が一昨日の生放送出演予定だったスタジオから行方が分からなくなり、安否が心配されています」

　キャスターは神妙な顔でそんな事を言う。
　その動画に映っているのは紛れもなく結城音生(ゆうきねお)で、そんな芸能人と自分がこんな雪山にいる今の状況に、雪は余計に混乱をきたす。

「尚、NEOさんが通っている国立Ｓ芸大で非常勤講師をしている画家の御幸美影(みゆきみかげ)さん、31歳の行方も分かっておらず――――」

　動画の中に出て来たのは自分の遺影みたいな写真だった。
　御幸美影。それが自分の名前か、と他人事のように思う。
　大学の非常勤講師で、画家で、殺人犯かもしれない自分が、芸能人を攫って来たのか？
　いやでも、自分がそんな大胆な事が出来るとは思えない。
　じゃあ、音生が自分を攫って来たのか？　何の為に？
　今からスポットライトを浴びて、ファンの声援を受けながら歌おうかと言う人気のある歌手が、こんな冴えない男を攫いに来るわけがない。