最果ての夜

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 軋む体をどうにか起こしてテーブルにつき音生が用意してくれた食事をとる。  轟轟と唸る窓の外を見ながらどこかに落として来たモノを思うと不安になり、余り喉を通らなかった。 「美味しくない? 雪さん」  テーブルに片肘を付いた音生はそう言って覗き込む様にこちらを見遣る。  音生が作ったクリームシチューはスープみたいに薄くて、正直美味しいと言える代物では無かったが、そこで文句を付けれる身分でも無い。   「あ、いや……そうじゃないんだ。こんな事は初めてで……今後どうしようかと考えていた」 「って言うか、このシチュー不味いね。味、うっす!」 「……そ、そうか? 不味くはないと……思うが」 「ぷっ、雪さんって嘘が下手だよね」  下唇に残るピアスの痕が食事をしているせいか妙に生々しく赤い。  痛そうに見えてそこにばかり視線が行ってしまう。 「何? 口元、何か付いてる?」 「あぁ、いや……そのピアスの痕が……痛そうだと思って」 「あぁ、コレね。外して結構なるんだけど、やっぱり痕は残っちゃったね」 「やっぱり痛くて外したのか?」 「んぇ? いや、そうじゃないよ。キスする時、気になるって言われたから外した」  ハッキリとしたその科白に、雪は噎せる所だった。  音生は容姿の割に気の優しい青年で、笑うと右側だけ八重歯が見える。  尖った見た目の割にはあどけない。
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