最果ての夜

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「震えてる……」 「あぁ……すまない。何でもな……ぃ……」  音生は大きく皇かな掌で、雪の右手を取った。 「ずっとこうしてるから、ゆっくり寝ると良いよ。寝る前に何か温かいものでも淹れようか?」  夜のせいか、雪のせいか、少し小さく囁く様な音生の声が、怖気立つ皮膚を穏やかに宥めて行く。  雪はただ小さく左右に頭を振って、音生の繋がれた右手をギュッと握った。  自分の手よりも温かい音生の手が、それに応える様にギュッと握り返される。 「寒くないか……? 音生」 「へーき。人の心配しないで、早く寝なよ」 「……すまない」 「雪さんは謝ってばっかりだなぁ」  ベッドサイドに凭れた音生の髪の毛が握られた手の甲に触れて、手首の辺りに湿った吐息が掛かる。  もし自分が殺人犯だとしたら、ここで彼と一緒にいる事は前途ある青年の人生を汚している様なものなのに、その熱や声、音生に与えられる優しさを拒否する強さが雪にはなくて、ただ瞼を閉じて都合のいい願い事を只管繰り返した。  神様どうか、今だけ、今だけ、彼を貸して欲しい、と――。
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