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「寒そう……ですね、背中」
「はい。寒いですよ!だけどポケットに、カイロを入れてきたので、それを握りしめて我慢します」
僕は、そんな事を淡々と話す貴女を見ていたら、笑ってしまった。
「そうなんですね。風邪引かないように気を付けて下さい」
「ふふふっ、ありがとうございます」
そう言って微笑んだ貴女は『へっくしょん!!』と豪快なクシャミをしてから、また屈託のない笑顔を見せた。
それは無愛想な僕でも、思わずつられてしまうような笑顔だ。
腕時計をまた、見てしまう。
電車がまだ来ませんようにと……
──それが50年前の僕と貴女の出逢いだったね。
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