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「いきなり何を言っているのかわからないと思う
もうすぐ日が暮れる
そのせいもあって少し、いやかなり混乱しているから俺が何を言いたいのかわからないと思う
右足だって挫いているし、体力だってヘトヘトだ
ああ、ゴメン
やっぱり何を言っているのかわかんないよね
ちゃんと順を追って話さないと
今、俺がいる斜面、そのはるか上の方にゲレンデの上級者コースがある
そこから大きくコースを外れた所で俺は今、こたつ…あっ!」
その時
携帯は俺の手を離れ録音途中のメッセージを載せたまま白銀の傾斜を滑り落ちた
そしてどんどん小さくなって雪の隆起の奥へと消えた
グローブを外して携帯を掴むその手はすぐにかじかんで感覚が鈍くなっていた
うかつだった
俺は今、日も暮れかけた雪山の真っ只中にいる
防寒の装備には余念がないけれど
手にしているのはスキー用のスティック一本だけだ
振り返る急斜面は俺のつけた板の跡がたくさんのハの字を描いて延びている
ハハハハハハハ… それはカタカナ文字のセリフの様で、まるで俺を笑っているかのようだ
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