2人が本棚に入れています
本棚に追加
ここは斜面のはずなのに、なぜかその一角だけが平坦に開けていて、ほんのりと明るかった
そしてこたつが置いてある
淡いピンクの敷マット、ふっくらとした若草色のこたつカバー
白いテーブルの上にはご親切にもポットと湯飲み、ついでにミカンまで置いてある
とうとう幻覚まで見えてきた
いやいや、ハッキリと見えている
しかも…そのこたつには先客がいた
それは
そのこたつで暖を取る若い女性だった
俺と同じ二十歳くらいの歳の子が一人静かに暖を取っている
肩下までありそうなストレートで長い髪、白くふわふわとしたセーター
なぜだろう…俺にはその姿が昔話の雪女と重なって見えた
彼女はじっとこっちを見ている
俺の姿に何ら発する言葉もなく、ただ俺を見ているだけだ
そこにこたつがある事もおかしいが、彼女のその様子に激しい違和感を感じた俺はその場で固まってしまった
彼女はごく普通に自分の部屋でそうしているように
こたつに入って俺を見ている
彼女はなぜこたつに?
いや、なぜこんな雪山にそんな軽装で?
その疑念はすぐに晴れた
まるで疑問を抱いた瞬間にそれは現れた、そうとすら思えた
見れば彼女の後ろには突き立てられたスノーボード、そして脱ぎ揃えられたシューズにカラフルなスノーウェアまである
ウェアを脱いで軽装になるくらいに暖かい、だって、こたつなんだから
うん、そういう事だ
だからこそ
日も暮れた寒空の元で、そのこたつに身を埋める様にでもなく普通にくつろぐ姿勢で座っている
ああ納得だ、疑問も解消しスッキリした
…いや、それ自体が普通にあり得ないだろ?
最初のコメントを投稿しよう!