終章 嘘だとわかって、乗ってみました

27/38
前へ
/584ページ
次へ
「でも、おじい様ほどの方が、あんなつまらぬ三文芝居を打つから、そこまで切羽詰まっているのかと乗ってさしあげたんですよ」 と言うと、そうか、と言う。 「だが、なにも嘘は言っとらん。  わしも老人じゃ百年以内には死んでおる」 「そんなの私だって、死んでますよ……」  そこで、渚は、統吉を見て言った。 「結婚を許してくださってありがとうございます」  ようやくまともになった渚の口調に、統吉も威厳を取り戻し、うむ、と頷く。 「貴方の望み通り、蓮にはこの家を継がせてください」 「えっ?」 「俺が稗田の家を出ます」 「渚さんっ」  渚がそんなことを考えていたとは思わなかった。
/584ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7166人が本棚に入れています
本棚に追加