コインランドリーの男

──先程、S県、N市、北区の中央公園沿いの大通りで、通り魔事件が発生しました。
被害者の20代女性は、腹部や頚部など、その他数カ所を刺されており、飼い犬の散歩中通りかかった40代男性が発見した時には、既に意識がない状態であったとのことです。──

「いやねぇ。また通り魔だって･･･。最近多くない？友美(ゆみ)の小学校の近くだし、なんだか怖いわねぇ」

風呂上がりにリビングに戻ると、妻がテレビに齧り付いていた。

──目撃者の証言によると、犯人の身長は170cm前後の痩せ型で、上下黒のウインドブレーカー姿だったとのことです───

女性アナウンサーの機械的な声が犯人の特徴を読み上げるのを聞きながら、冷蔵庫を漁る。

喉が渇いた。
ビールが飲みたい。

「犯人、まだ捕まってないんだって。･･･もしかしたら、まだこの辺りを逃げ回ってるかも！」

「ふーん。まぁ、そのうち捕まるんじゃない？」

「えっ？そんだけ？すっごい近所なのに！」

「あぁ、それは怖いね」

とりあえずで返事をすると、妻が愛想を尽かしたように鼻息を漏らした。

妻の機嫌を損ねるのは不覚だったが、正直、今はそんなことどうでもよかった。

汚れてしまった服が、何よりも気になっていた。