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寒い。
息をするだけで、身体の中が凍りそうなくらいの空気の中を、コインランドリーに向けて歩いた。
空には雪が舞っている。
─ 確か、あの夜も、こんな寒い日だった・・・──
コインランドリーに着くと、そこには誰もいなかった。
深夜のラジオ放送だけが、虚しく響いている。
どうやらファミリー向けの住宅が多いこの地域では、深夜の客は少ないらしい。
ゴミ袋を開けて、その中身と、家から持参した漂白剤入り洗剤を入れる。
「・・・取れるかなぁ・・・」
洗濯槽の中で黒い服がグルグル回る。
徐々に赤くなっていく水の色を見ていたら、急に煙草が吸いたくなった。
「まぁ、1本くらい吸っても大丈夫だろう・・・」
ここは都会の一等地、便利な場所だ。
欲しいものは、大抵すぐに手に入る。
「・・・はぁ、不味い・・・」
向かいのコンビニから買ってきた、約10年ぶりの煙草の味は最悪だった。
「雑誌でも読むか・・・」
煙草を灰皿に置いて、代わりに週刊誌を手に取った。
こんな不味いもん、何で吸ってたんだろう・・・。
・・・何がきっかけで止めたんだったっけ?
そう言えば、どうして急に吸いたくなったんだろう・・・?
外ではまだ、雪が舞っている。
「はぁ・・・つまんね」
雑誌の紙面を賑わすのは、芸能人のゴシップと、如何にもなマルチ商法の広告、そして、未解決の事件の真相を語る身勝手な記事ばかりだ。
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