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「本当はね、雪が好きだったわ」
彼女は空を見つめて言った。
息を切らしながら、全身で呼吸をし、額から止めどなく流れる汗を拭う。
「雪のように降って消えたかったの」
「ずっと……君を探していたんだ」
彼女は僕を見つめた。
やはり彼女は美しく、どこか現実離れしていた。
「もっと君のことが知りたい。例えこの世にいなくても、僕は君に出会ってしまった」
「おかしな人ね。何度もあなたの夢を見たわ。いつも走り回って私を呼ぶの。……でもね」
彼女は空を見上げる。
「私の居場所はここじゃない」
気づけば雪が止んでいた。彼女の身体が消えていくのがわかる。
待って……待ってくれ……!
僕は何も伝えていない。
話したいことがたくさんあるんだ。
やっと会えたのに……!
必死に手を伸ばす。
すると、彼女は消える寸前に僕の耳元で囁いた。
「え……」
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