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――地球から遠く離れた、暗黒の海原。ひとたび青い母星を見失えば、自分の居場所など一瞬で分からなくなるような――永遠の闇。
その無の空間を、3機の宇宙戦闘機「コスモビートル」が駆け抜けていた。赤、青、黄。その三色に分けられた鋼鉄の翼が、巨大な「何か」から逃れるように……この宇宙に、己の軌跡を描いている。
――そして。大きく揺らめき、蠢く「何か」の影は。殿を務めていた赤い機体を、執拗に狙っていた。
「くそッ……まさか、こんなッ……!」
その機体を駆る、若き青年。彼は自分の頭上から、覆い被さるようにこちらを見据える赤い眼光を――「焦燥」に満ちた瞳で見上げていた。
青い機体と黄色の機体を操る、男女のパイロット達も。殿に迫る死の脅威を前に、悲痛な声を上げる。
『ダメだ! もう持たん、逃げろ威流ッ!』
『お願い、逃げて威流ッ! 私達のことは、もういいから……!』
「大丈夫、だッ! 絶対助けて見せるから……オレを信じろッ! ――円華! 竜也ッ!」
だが、そんな彼らの言葉に耳を貸さず。赤いコスモビートルのパイロットは、操縦桿を切り機体を反転させる。
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