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全てを穿つ火炎放射を、かわし切ることは出来なかった。
「……! あ、あぁあ……!」
「ちっ……ち、くしょうッ……!」
大破、炎上し。錐揉み飛行で闇の彼方へ消え去っていく、赤いコスモビートル。その光景を目の当たりにした仲間達が、悲痛な声を漏らした。
黄色い機体に乗る男性パイロットは、口惜しげに歯を食いしばり。青い機体に乗る女性パイロットは、瞼を閉じ現実に目を伏せる。
「そ、んな……! こんな、こんなこと……! お嬢様に、お嬢様になんて報告すればッ……!」
通信も途絶え、ノイズばかりが響く中。一際強い悲しみの中にいた、女性パイロットの慟哭が――この宇宙に轟いた。
「……威流ゥウゥウッ!」
だが、その叫びが届くことはなく。
――地球守備軍所属、コスモビートル隊パイロットの日向威流は、この日。
最後まで、仲間達と共に帰投することはなかった。
◇
――その頃、時を同じくして。
「……!」
蒼い長髪を靡かせる、ある1人の少女が。深き森に包まれた祭壇の上で、ハッと顔を上げていた。
豊かな森と清らかな水で満たされた、この惑星の中で――彼女は天を仰ぎ、翡翠色の瞳を細める。
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