第2話 見知らぬ悪者。

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

第2話 見知らぬ悪者。

 ひょっこり顔を覗かせたのは、見知らぬ男。 目の下のクマ、青白い顔。いかにも不健康そう。 おまけに黒いフード付きのマントまで着込んでる。これ、完全に不審者の服装だ。 「あ……」 アタシと目が合うと―――バタン、と扉を閉めた。 「いやちょっと待て閉めんじゃねぇ!」 「すんませんでした!!」 この謝り方……コイツ、どこかの舎弟?  「えっと、アンタ誰?」 「お、俺様はイーブ! 世界一の魔法使いだ!」 「………」 あ、なんか変なヤツだ。そう、直感的に思った。 「黙ってないで何か言えよ!」 「そんなこと言われても……とりあえず、ここはどこなんだ?」 「ここか? ここは俺様が所有する塔だが。ん……? ちょっと待て……」 何かうなりだした。 しばらく考えた後、イーブの紫色の瞳がギラリと光った。  「お前、王女じゃないな!」 「はあ!?」 いきなり王女じゃない!とか言われても、頭がついていかない。 アタシは王女じゃないし、まず日本に王女なんていない。  「一体全体、どういうことだ……? 昨日見た時には王女はいたのに……」 ブツブツ言いながら、部屋の中を回りだす。 アタシは黙って見ていた。 ようやく結論を出したのか、ようやくイーブは此方を向いた。 そして同時に、アタシの鼻先に刃物を突き付けた。 「 言え。王女はどこだ?」 先程とは打って変わって低い声。 彼の目に宿るのは殺意。 「知らないよ、ンな者……それより、このアタシに喧嘩を売るなんて、いい度胸してるねぇ」 思わず笑みがこぼれる。 ああ、久しぶりだ。この感覚。 喧嘩を売られ、買う時の快感。 すっかり忘れてた。  アタシはニヤリと笑うと、右足を大きく振り上げた。 「なっ!?」 狙い通り、アタシの右足はイーブが持つ刃物を飛ばした。 驚いた彼の顔面に、鋭い右ストレートを叩きこむ。 「んがっ……」 ゴン! と嫌な音を立てて、イーブは壁に激突。そのままズルズルと倒れ込んだ。  「大したこと無いな……」 喧嘩を売ってきたくせに、こんなに弱かったなんて。 つまんないの。 アタシは落ちていたナイフを拾い、部屋の外へ出た。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!