第5話 腕輪に宿った者。

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第5話 腕輪に宿った者。

 「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」 荒い呼吸を繰り返す。 森を抜けた先にあった湖のほとりで、アタシは座り込んでいた。  全力疾走したのはいつか、そんなの覚えてない。 そんなアタシを見たのか、謎の声は笑いながら言った。 『さっき「言われなくてもな!!」って言ってたのは誰だ? えらい疲れてるようだが』 「るさい。あんなトゲトゲだらけの森の中、走らせるほうが悪いだろ」 足首までのロングドレスに、走りにくいヒール。 きつすぎる。  『……それ以外にお前が生きるための方法がなかったんだよ』 あれ? すねたか、コイツ。 「まあ、アンタのおかげで助かったんだ。礼を言うよ、ありがとな」 『ふん……』 まだまだ不機嫌そうな声だったが、どことなく嬉しそうに聞こえたのは、アタシの気のせいだったのだろうか?  「とりあえず、自己紹介でもしようか。アタシは姫乃。アンタは?」 『イーブだ。さっき会っただろ、偽王女』 「え……あああああっ!?」 森の中にアタシの大声が響き渡る。 さっきの? アタシが殴り飛ばした? あの不健康そうな? 「イーブ!?」 『そーだよ、悪かったか!』 「あーもう、わかったわかった。とりあえずアンタは、何かがあって、この腕輪に取付いたと」 『納得するの早いな』 謎の声、もといイーブは呆れたように言った。 「面倒くさいことはしたくないんでね」 昔からそう。 何事もサッサと知りたかった。 となれば、今からすべきこと。それは―――  「それじゃあイーブ、この世界について教えてくれ」 今からアタシがすることは、この世界について知る事だ。 どう考えてもここは、日本じゃない。 日本にいるのは天皇で、王女なんていない。 アタシが知る限り、毒々しい色の葉を持つ植物はない。 そんな世界で生きるために必要な物、全部手に入れてみようじゃないか。  『わかった』 あれ? コイツ、見返り要求してないけど、良いのか?
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