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佳澄はカレンダーを見つめ、ため息をつくと1枚剥がした。
1月が終わり、2月になった。そして2月の14日、つまりバレンタインにはドクロのシールが貼ってある。佳澄はそのドクロを見て再びため息をついた。
「あーもうバレンタインだるっ!てか麗華がだるっ!」
佳澄の言う麗華とは表向きの友達である。
麗華はそれなりに美人でそれなりにお嬢様であるが、性格に問題があった。
まず自分が面倒だと思った事は佳澄達に「友達でしょ?助けて」と言って押し付ける。そのくせ友達が困ってると見て見ぬふりである。
かなりの目立ちたがり屋で図々しく、佳澄達と友達でいるのも、佳澄達の顔面偏差値が高いからだ。「私がいる方が何かといいでしょ?」と訳の分からない事を言って無理やり佳澄達のグループに入ってきた。
佳澄はそんな麗華が鬱陶しかった。そのグループのリーダー的存在の佳澄の親友を名乗り、佳澄がいない時はやたら威張り散らしている。佳澄だけでない、グループの皆が鬱陶しがってる。
昨日、麗華から佳澄にメールが送られた。
[もうすぐバレンタインね。大親友からのチョコレート、楽しみにしてるわ。私も頑張るから]
このメールを見た瞬間、佳澄はケータイをぶん投げた。それだけ麗華が嫌いなのだ。
「ふふ、いいじゃない……。“大親友”からとっておきのチョコレート、プレゼントしたげるわ……。ふふふ、ははっ、あーっはっはっは!」
佳澄の家に彼女の高笑いが響き渡る。
バレンタイン前日、台所には可愛らしいカップやチョコレートなどが並んでいる。その隣にはバレンタインとは……いや、料理には遠慮したいものが並んでいる。
それはびっしりと張り付いたゴキブリホイホイとまるまる太ったネズミが囚われたネズミ捕り。
「さーて、まずは麗華お嬢様のから作りましょ。“大親友”だしねぇ」
佳澄は手際よくチョコレートを刻むと、鍋に生クリームを入れ、火にかけた。
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