2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
私は空の寝息のことばかり気にしていて、大変なことに気づけなかった。
母親失格だ。
空の顔は真っ赤、おでこに手をあてると酷く熱い。
空を抱き上げ、部屋をウロついた。
何をすればいいのか分からない。
寝室の扉を開け、寝ている旦那を起こした。
「空が…空が死んじゃう…」
旦那がどうしたのか聞いても、私はそう言って泣くだけだった。
旦那は空を私から取り上げると、体温計で熱を計り、冷やしたガーゼをおでこに乗せて、身体をモーフで包み、救急病院に電話を掛け、車のエンジンを掛け、雪かきをはじめた。
雪かきを終え、戻ってきた旦那が空を抱き上げた。
「空の隣に乗って。」
少し車を走らせると、タイヤが雪で空回りをする。
その度に旦那は車を降りて、雪をかいた。
暗闇に降り続ける白い悪魔が、空の命を脅かす。
それは絶望の空だった。
病院着いたのは、1時間後。
いつもなら、15分で着くのに。
冷たかったタオルは熱く、空の息は酷く荒い。
混乱して使い物にならない母親に代わり、旦那はテキパキと事を運ぶ。
病院の診療を終えて、空が大事には至らないと知ると、私の意識がすーっと薄れた。
バタン!
最初のコメントを投稿しよう!