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 そして思う。皆、こういう貴重な情報や意見を聞けるから、仕事に関する有益なものが得られるから、職場での人間関係を作るのだと。飲み会に行って職場の愚痴を言い合ったりするのだと。  麻木は誰とも交流がないから、こうして時々誰かの噂話を盗み聞きする程度の情報しか得られない。  そういう面で明らかに損をしている。  やはり仕事をする上で八奈見のように孤高でいるのは難しい。より多く情報を持っている者が強いと思う。  だから志賀のようにあちこちにネットワークを作っておいて、それに時々顔を出し、人より多くの情報を仕入れるというのは、面倒くさいが実に理にかなっているといえる。  愛想がいい人間を理解できないと思うのは確かだけど、それを仕事のためだと考えると、コミュニケーションにおける要となるものだと思う。誰だって無愛想な人間に近づこうとは思わない。にこにこして話してくれる人に本音や情報をぽろっと漏らしてしまうものだ。  今まで避けてきたけれど、もう少しコミュニケーションを磨く必要があるのかもしれない。  一番苦手な分野だ。でもこれのせいで損をしているのだから何とかしなければならない。  今回の失恋が最もつらかった。  恋は二度としないにしても、もう自分の不甲斐なさで苦しい思いをしたくない。
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