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「え~、おひつじ座のあなたは……」  と、もったいぶった口調で、親友の航(こう)が咳ばらいをした。 「今年の夏は海やプールで思いがけないアクシデントの予感。水のある場所へのお出かけはご用心」  週刊誌の占いから顔をあげた航が「だってよ」と気の毒そうにぼくを見た。日に焼けたヤツの鼻の頭が赤くすりむけている。 「それ、水難の相ってやつ?」 「ああ、そうだな」  大げさにうなずかれ、ぼくは席から立ちあがって抗議をした。 「夏はまだはじまったばかりなのに……今から海もプールもダメなんて、そんなの死刑宣告だ。無実の罪だよ、えん罪だ。ぼくまだなにも夏っぽいことしてないのに」 「そんな興奮すんなよー。マホガニー色のモノを身につけると、運気回復って書いてあるぜ?」 「マホガニー? それ、どんな色なの?」  肩を落としてうなだれるぼくに航は、 「マリンブルーだったら夏っぽかったのにな」  と笑った。     
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