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こんな風にぼくの頭は、ときどき空想の世界へ小旅行に出かけてしまう。クジラの歌に水浸しにされた頭のなか。占いに書いてあった海やプールに近づいてもいないのに、溺れてしまった気分だ。水難の相とはちょっとちがうかもしれないけれど。
「ほら、本番五秒まえ。早くしねーと先生がようす見にくるぜ」
めずらしく航にせかされて、あわてて頭のなかを小旅行から呼び戻した。
航が音声調整卓のスイッチをなれた手つきで、ぱちぱちと押していく。オープニング曲の再生スタート。曲の流れ出しにノイズが混じらないように、航がアンプを調整してくれる。流れはじめるメロディ。
Uhh Can you here me?
Can you here my radio?
放送室の低い天井を突き抜けていくパワフルなボーカル。JUDY AND MARYの『RADIO』がぼくらの曜日のテーマソングだ。まえにナナシの匿子さんがリクエストしてきた曲で、すぐにぼくも航も大好きになった。声は電波にノッテ! なんて歌詞、ぼくらの放送にふさわしい。
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