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朝の光があふれる教室。グラウンドに跳ねかえった陽射しが、やわらかくクラスメートたちをつつんでいた。窓際に置かれたメダカの水槽。天井にむかって反射する水面がまぶしくて、ぼくは手をかざしながら、航の持つ週刊誌をのぞき込んだ。
「で、コウはなに座だっけ?」
調子にのって身を乗り出した拍子に、ワッ! と机が傾き、まえのめりにバランスを崩した。航の力強い腕がぼくを支えてくれる。
「おっと……おれ? おれは、くじら座」
なんじゃそりゃ。
「コウは、しし座だろ」
と、支えてくれた手のひらにむかってパンチをする。
「知ってんならわざわざ聞くな」
受け止めたぼくのパンチをギュッとつかんで航はニヤリとした。思わずヤツの目に見惚れる。昔っから変わらない、強く光るやんちゃな瞳だ。航の手のひらに熱を感じた。
――脳天に衝撃が走った。バン、バンと軽快な音が二連続。ぼくと航の頭で一発ずつ。
何ごとかと身をすくめるぼくらに、
「こら、お前ら! いつまでサワの席で見つめ合ってんだ。サワが困ってるだろ」
担任の大野がぼくらの背後に立っていた。先生は出席名簿の固い表紙を手のひらでパンパン鳴らしながら、ぼくの頭をこづく。その脇で、クラスメートのサワさんが申し訳なさそうに「あ、わたしはぜんぜん大丈夫なんだけど」とパーにした両手をフリフリしながら、申し訳なさそうにしていた。
「ここはサワの席。で、奥田はとなりのクラス」
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