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 ぼくは首を振った。昼休みの放送開始まで、もう時間がない。今日の分のリクエスト曲を適当に選ぶ。匿子さんのリクエスト用紙は、なくさないようにノートにはさんだ。『恋はあせらず』、昔の曲っぽいし大野に聞いてみよう。大野はうちのクラスの担任だけじゃなく、放送委員会の顧問もやっている。レトロな音楽が好きで、そういうCDをいっぱい持っているんだ。 「と・に・か・く。マコトにもザトウクジラのすごさをわかってもらいたいんだよ!」  いっこうに聞く耳を持たないぼくに、航は一枚のCDを強引に投げてきた。取り落としそうになったジャケットをあわててキャッチした。 「図書館のデジタル・ライブラリーで見つけたんだ、それ」 「ザトウクジラの唄?」  青いジャケットに書かれたタイトルを読みあげる。 「そう、ザトウクジラは歌うんだ」  どこで調べてきたのか、航はザトウクジラについての知識を披露しはじめた。(実は、CDにについている解説書に書いてある内容ばかりだったわけだけど)コウハイキとか、シュウハスウだとか、コタイシュによらぬコウソウカイゾウとか。何のことを言っているのかぼくにはチンプンカンプンだった。航だってちゃんと理解して言っているのか、アヤシイもんだ。CDはいわゆる環境音楽のようなもので、ザトウクジラの声を収録したものだった。 「それ、つまり鳴き声じゃないの? イルカだってキュウキュウ鳴くじゃん」 「バカ、ちゃんと音階があるんだ」     
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