クリスマス

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クリスマス

 サイコパスは、彼氏を殺してきた。  今日は、クリスマス。  粉ミルクが大空から舞い散るかのように、甘い記念日がやってきた。    昨日まで付き合っていた愛しい彼氏は、もういない。  彼は私のためにプレゼントを買ったりと、この日を楽しみにしていたらしいが、私は違った。  ――他に好きな人ができてしまったのだ。  今日、このクリスマスに、私はその好きになった人に告白する。  その為には、彼と別れるしかなかった。  でも別れを切り出すのは、彼を悲しませることになる。  そんなことはしたくない……  いくら他に好きな人ができたといっても、彼を嫌いになったわけじゃないから……  優しかった彼のことだから、私が「別れたい……」なんて言ったら、寂しそうな表情を浮かべながらも「わかった、君の幸せを願うよ……」そう言って彼は身を引く。そんなことは安易に予測できた。  だから……殺した。  彼と過ごした、楽しかった今までの記憶を、悲しい別れで汚したくはなかったから……  彼の幸せそうな笑顔をこの瞳に記憶し、 「ハッピーメリークリスマス……」  その言葉を最後にかけて、彼を雪積もるどこかに埋めてきた。  これで、私たちふたりは、幸せだ。  彼はこれから先、悲しむことはない。私との幸せな記憶の上に余計なものは降りかからない。  私は私で、新しく好きになった人と、違う幸せな記憶を積み上げていくことができる。  サイコパスは、気持ちの準備を整え、告白しにあの人の元へと向かった。  シトシトと、想い募らす、クリスマス。  赤々と、乙女心を、染めるかな。
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