1月24日

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   『――1月24日。  ふと先輩が、〝雪山は危ないから初心者だけで登らない方がいい〟と言っていたことを思い出す。  私はその時、先輩のその言葉を真面目に受け止めてはいなかった。何故なら、先輩が登山を始めたのはほんの数年前、大学生になってからだからだ。そのきっかけは、大学入学時に勧誘を受けて登山部に入ったことだったらしい。一方私はひとつ下の二年生だけれど、中学の頃から父とよく登山をしていた。経験年数で言えば私の方が上だった。雪山の経験こそないけれど、スノーシューで雪原を歩いたことはあるし、スキーも好きだから雪には慣れている。先輩が登れるなら私も、と思っていた。  初日、昼十三時半の時点で私たちは予定していたコースタイムを大幅に遅れていた。  視界は白一色だった。西に曲がるはずの道が見つけられず、木々に括り付けられた目印のリボンも見失った。数日前の積雪で他の登山者の足跡も消えている。白銀の世界の真ん中で私は途方に暮れていた。地図とコンパスを照らし合わせてみても、三十分程前から自分の位置が分からなくなっている。  この時点で引き返すべきだったけれど、後ろに続くメンバーの根拠のない励ましに釣られてしまった。『迷った場合は稜線を目指して上へ登ること。いずれ正規ルートに合流するだろう』といういかにも安直な考えで私は進むことを選択した。  『遭難』という言葉を使うことはまだ早いと思っていた。だけれどそれは、ただ皆の信頼を失いたくなかっただけに過ぎない。おかしな意地で引き返す判断ができないのは、今考えればリーダー失格だった。  
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