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――初日に私たちは、全ての食料を出し合い再配分していた。
当時、雪は翌日には止むだろうと思っていたけれど、念のための対応だった。持っている水、非常食、行動食を四人で出し合った。
だが、私以外の三人は少しのお菓子と一本のペットボトル程度しか持っていなかった。
元々ご飯は山小屋でもらう予定だったし、途中に水場もある。だけれど、非常時に備えて食料は多めにと言っていたはずなのに、その言葉はまともに伝わっていなかったらしい。せっかくの楽しい山行に、荷物の重さは邪魔だったのだろう。
うんざりしたが、自分の管理能力とそもそもの道迷いの原因を思い出し、言葉を飲み込んだ。私だけ大量に持ってきていた食料と水を分け、何とか吹雪が止むまでやり過ごそうと思った。
それを踏まえたうえでの、今。
目の前で、初日に見た覚えのないポテトチップスを食べている正樹くんを見て、私は目眩を覚えた。
「……正樹くん」
話しかけると、正樹くんは驚いたように振り返った。
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