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〝もしかして、今日ここに泊まり? 勝間山荘の焼うどんは?〟
……そうだ。
そう言えばこいつは、以前から山小屋での食事のことばかり気にしていた。
思い返すと、正樹くんは集まりがある時はいつも何かしらお菓子を食べていた気がする。小太りな体型からも、食いしん坊であることは明白だ。
この非常時に、自分勝手な。
怒りが湧き上がったけれど、私はそれをどうにか抑えた。三日が経ち食料は少なくなっている。けれど、どんな極限状態でも冷静さを失ってはいけない。
「……正樹くん、ごめん。お腹空いてるとは思うけど、もし他に食べ物持ってるなら出してくれないかな」
「……」
正樹くんは罰が悪そうに、自分のザックをズルズルとこちらに寄越してくる。
その中には、お菓子やジュース、おにぎりやサンドイッチが満載していた。まさかこんなに持っているとは思わず、私は仰天した。初日に私が出した食料と同じぐらいの量を隠し持っていたことになる。
正樹くんは不服そうな顔をしていた。
「……やっぱり、奈津美さんなんかについてくるんじゃなかった」
「え?」
その言葉は聞こえていたけれど、私は思わず聞き返した。
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