1546人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
長いこと合わせた手が膝の上で拳となった。祖母に向き合う。
「お祖母さま。どうか墓参りをさせてください」
「こっちへ」
足が悪く自分からは動けないのだろう、ジェイをそばに呼んだ。素直に祖母の前に座る。祖母はその手を取って両手に挟んだ。
「許しておくれ……酷いことをしました。本当にひどいことを……もう謝ることなど出来ないだろうと思っていました。よく……よく訪ねてくれ……」
後は言葉にならない。ぽたぽたと涙が垂れている。
あまりにも変わってしまった祖母の姿にジェイはどうしていいか分からずに蓮を振り返った。
「きちんとお話するんだ」
蓮はそれだけを言った。
「お祖母さま、墓参りを許してくれるんですね?」
「もちろんです。あなたのお母さんなのだから。これからは来たい時においでなさい。でもこの家には入れないかもしれない。それでもいいですか?」
「あの、お祖母さま、何かあったんですか? 病気……なんですか?」
あの気迫は跡形も無かった。自分を孫と認めてくれたんだろうか。
「鈴花が大切に育てた息子をどうして私は大切に出来なかったのか……辛かっただろうに、あなたは文句ひとつ言わず、逆らうことすらせず……可哀想なことをしてしまった…… お祖父さまのことは諦めなさい。あの人は昔のままだから。私はあとどれくらい持つか分かりません。癌ですからね、いつ鈴花の元へ行くか…… そう思った時に鈴花のあの声が聞こえました。あなたを決して一人にはしないというあの言葉が」
母が言ってくれた。
『あなたを一人になんかするもんですか!』
(母さん……俺をずっと見守っていてくれたんだね……)
時を経てこの家に入れると思ってもいなかった。仏壇の前に座るなどと。
最初のコメントを投稿しよう!