5.ジェイと蓮

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「どうした?」  優しい声になった。どうしていつまでも冷たい態度を取れるだろう、こんなに寂しい思いをしてきたジェロームに。 (だからこそお前との距離を縮めたいんだ。ごめんな) 「れ……ん……」 「ん? 聞こえないよ」 「……れん……」 「もう一度」 「れん! これでいいですか!?」 (俺、辛い思いさせてるよな) きっとジェイの性格なら激しい抵抗があるだろうに。 「いいよ。お前のことは? ずっとジェロームでいいか?」  ジェイは考え込んだ。それでいい、そう言おうとした。 「ジェイって呼んでください、母はそう呼んでくれました」  自分でもそんなことを口走るとは思ってもいなかった。 「いいのか? お母さんが呼んでくれたなら大事な呼び名だろう?」 ――優しい人だ……気づいてほしいことを言ってくれた…… 「いいんです。課長……蓮にはそう呼んでほしいです」 「そうか。ありがとう、大事な名前を。ジェイ、これは仕事以外の時だけだ。そこはお互いに気をつけよう。いいな?」  ジェイは頷いた。 「じゃ、これ被っとけ」  河野が差し出した野球帽を受け取った。 「お前、きっと騒ぐだろう? だから被っとけ。俺も恥ずかしいから」 「恥ずかしいって……」 「あんまりはしゃぐなよ、ジェイ」  母に呼ばれた時とはまるで違う、鼓動が走る。 「はい、れ……蓮」  二人は車から下りた。  
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