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「何から始めるか?」
そう言った時には何をしたいのか分かった。
(へ!? まさか、こいつ……いや、嘘だろ! 勘弁!!)
「ジェイ! 待て、ジェイ!」
入って来た時からジェイの目はそこに釘付け。他も見ず、一直線に歩いて行く。もはや蓮の声は聞こえていない。
(嘘だろー、よりによって……)
ジェイの目をくぎ付けにしているもの。レールを2度ほどくるりと回って疾走していく乗り物。そう、ジェットコースターだ。
(なんだっけ、トルネードだっけ)
正直名前なんてどうだっていい、乗ることにさえならなければ。
やっと後ろからジェイの腕を掴んだ。
「ジェイ、どこに行く気だ?」
「あれ!」
真っ直ぐ指を差すのはやっぱりジェットコースター。
(マジか)
「あれ、危ないんだぞ。死ぬかもしれない」
「あれに乗って死ぬならそれでもいいです」
(いや! 俺は死にたくないぞ!)
でも足は止まらない。肩をがっくり落として蓮は後ろについて行った。
「いいのか? 後悔するぞ」
乗ったことがないからだ、こんなに興奮しているのは。そう思う。きっと途中から下りたいと騒ぐだろう。自分がしっかりと肩から脇へと通っている安全バーを握る手が汗で濡れていることには気づいていない。
「ジェイ! 手を放すな、ちゃんとバーを掴め!」
「大丈夫です、だってそのためにバーがあるんじゃないですか!」
蓮の顔など見ていない。よりによって座っているのは一番前。そこに座りたくて並ぶ順番をずらしたくらいだ。
「いいから掴め! 何かあったらどうするんだ!」
「平気だってば!」
その言葉が終わらない内にコースターが動き出す。
(大丈夫だ、そんなに何分も乗るわけじゃない)
呪文のように心に唱えられたのもほんの20秒ほどだった。
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