5.ジェイと蓮

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  「何から始めるか?」  そう言った時には何をしたいのか分かった。 (へ!? まさか、こいつ……いや、嘘だろ! 勘弁!!) 「ジェイ! 待て、ジェイ!」  入って来た時からジェイの目はそこに釘付け。他も見ず、一直線に歩いて行く。もはや蓮の声は聞こえていない。 (嘘だろー、よりによって……)  ジェイの目をくぎ付けにしているもの。レールを2度ほどくるりと回って疾走していく乗り物。そう、ジェットコースターだ。 (なんだっけ、トルネードだっけ) 正直名前なんてどうだっていい、乗ることにさえならなければ。  やっと後ろからジェイの腕を掴んだ。 「ジェイ、どこに行く気だ?」 「あれ!」  真っ直ぐ指を差すのはやっぱりジェットコースター。 (マジか) 「あれ、危ないんだぞ。死ぬかもしれない」 「あれに乗って死ぬならそれでもいいです」 (いや! 俺は死にたくないぞ!) でも足は止まらない。肩をがっくり落として蓮は後ろについて行った。 「いいのか? 後悔するぞ」  乗ったことがないからだ、こんなに興奮しているのは。そう思う。きっと途中から下りたいと騒ぐだろう。自分がしっかりと肩から脇へと通っている安全バーを握る手が汗で濡れていることには気づいていない。 「ジェイ! 手を放すな、ちゃんとバーを掴め!」 「大丈夫です、だってそのためにバーがあるんじゃないですか!」  蓮の顔など見ていない。よりによって座っているのは一番前。そこに座りたくて並ぶ順番をずらしたくらいだ。 「いいから掴め! 何かあったらどうするんだ!」 「平気だってば!」  その言葉が終わらない内にコースターが動き出す。 (大丈夫だ、そんなに何分も乗るわけじゃない) 呪文のように心に唱えられたのもほんの20秒ほどだった。  
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