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落ち着いてきて蓮はジェイの頭をパカンと叩いた。
「ずいぶん気持ち良く笑ってくれたな。覚えてろよ」
「もう! 笑っちゃうからその話やめてください。鬼課長が遊園地の乗り物で具合悪くなるなんて話、三途川さんが知ったら大喜びしますよ」
「あれにだけは言うな、えらい目に遭う」
その苦り切った顔にクスクス笑う。
(来て良かった)
いつもの表情が、陰が消えている。
(遊園地、有りだな)
きっと自分以外、誰も連れてきやしない。ジェイを子どもみたいに笑わせることが出来てすごく嬉しい。思いがどんどん募っていく。
(ジェットコースター、克服しないと)
そんなことまで考えていた。どうしてもまた喜ばせたい。
「次はどれがいい? あ、頼むからメリーゴーランドの類いや観覧車はやめてくれよ」
「えぇ、観覧車は乗りたいです」
「だ! め!」
今度はジェイが膨れた。
「そんな顔しても……だめだ」
言いにくい、だめだと。きっとこの顔を見続けたら自分は良しと言ってしまうだろう。
「分かりました! 他のもん探します」
そうニコッと笑うからホッとした。
ジェイはいくつかのアトラクションを堪能して、今缶コーヒーを飲んでいる。その間も絶え間なく周りを眺めていた。
「連休だな」
蓮の声に、視線が戻った。休みなくあれこれ回ったせいか、少し疲れた顔に見える。
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