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「いらっしゃいませー。って、松永さん? こんな日に何やってんの!?」
「あっ、高藤先輩……」
こんばんは、と続けたかったけれど、寒さで口が上手く動かない。
結局、暖房はついてくれなかった。
コートを着て、マフラーも手袋もして、布団にくるまってみたものの、全く温まらず。
耐えられない。
外はまだ雪が降り続いていたけれど、このまま家にいて震えているよりは、暖かい場所へ避難したい。
そう思ってアパートから100メートルほどの所にある24時間営業のファミレスへ逃げてきたのだ。
途中、何度も後悔したけれど。
「まさか、わざわざ夕飯食いに来たわけじゃないよな?」
高藤先輩はそう言いながら席へ案内してくれる。
店内には他に客はいないようだった。
「実は、エアコンが壊れてしまって」
「えっ、まじ?」
同じサークルで、2つ歳上の先輩は人気者だ。
特別見た目がカッコいいというわけではないのだけれど、いつもニコニコと楽しそうで、周りの人まで笑顔にしてくれるムードメーカー。
私たち後輩のことも気にかけてくれて、優しくて、頼りになって。
うちのバカ兄貴じゃなくて、先輩がお兄ちゃんだったらな、なんて思ってしまうぐらい私も密かに憧れている。
今日、先輩がバイトの日でよかったぁ。
店内の温かさと、先輩の笑顔のおかげでほっと一息つけた。
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