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「あ、霜取り運転とかじゃなくて?」
「霜取り運転?」
「うん。すごい寒いと室外機に霜がつくんだって。それ取るために暖かい空気を室外機のほうに流すとかなんとかで、部屋が暖まらなくなるんだけど、それじゃないの?」
「そうなんですか? どうなんだろう、冷たい風しか出てこなくて」
エアコンにそんな機能があったなんて知らなかった。
「わかんないけど。どっちにしろ寒いよな。どうすんの?」
「とりあえず朝までここにいようかと。朝になったら大家さんに話してみます。あ、ドリンクバーだけ頼んで居座ったらまずいですか?」
そういえば財布にあまりお金を入れていなかった。
課題でもやって時間を潰そうと思って勉強道具は持ってきたけれど。
服だってコートの下はスウェットという思いっきり部屋着で出てきたことに今さら気づいて恥ずかしくなってしまう。
慌てるとろくなことがない。
「いや、まぁ、こんな時間だし、今日はほとんど客来ないだろうし、それはいいけど」
うーん、と何かを考えるような表情を浮かべる先輩。
やっぱりお店としては、こういう客は迷惑だよね。
先輩の顔を見ていられなくて視線を下に落とす。
「飯は食った?」
「はい」
「そっか。じゃあ、温かいココアでも飲んで待ってて。俺、30分ぐらいで上がるから」
「え?」
先輩は私の頭をポンポンっと撫でてから、オーダーを取る機械を操作しながら仕事に戻っていった。
待ってて、って?
頭ポンポンって。
先輩の行動もだけれど、それにキュンっとしてしまっている自分に驚いた。
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